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傾いた場所 (3)

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「稔幸(としゆき)くん」

「ねえ、稔幸く〜ん」
女は、先を行く男に声を掛けた。

「え、ああ、亜紀子か。何?」
男は振り向きながら応えた。

「今の講義、どう解った?。幾つか疑問があるんだけど教えてくれないかな」

「俺に? 俺、昨日は徹夜でさあ、ほら例の課題作成が終わってなくてねえ。半分寝てんだよ。でも構造力学は専攻だし、大体のことは解るかな…」

「私、デザイン専攻だし、構造って一番苦手なのよね」

「まあ、女で構造が好きなのはほとんどいないだろう。じゃ、裏の喫茶店へ行くかい」

「わぁ嬉しい、コーヒー、私が奢るから」
亜紀子は少し弾んだ。
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喫茶店は空いていた。静かにクラシックが流れていた。

「じゃー早速、いいかしら」

「今日は確か壁式構造だよね」

「そうそう、壁式とラーメン構造の違いから始まって、いろいろね。そもそも教授の講義が悪いのよね。講義下手だモン」
と言って亜紀子は屈託なく笑った。
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「ところで、稔幸くんは就職はどうするの?あと1年半だけど」

「やっぱり設計事務所かな。実務をやって一級を取って。うん、先々は独立したいけど…」

「構造で行くの?私、事務所のバイトやったけど、大変よ。特に構造は、下請け的な仕事になるしねえ」

「ああ、確かに今の建築界って、構造は後回しだし、デザイン屋の下請けだよね。壁とラーメンじゃ、そうなるよね。俺は特殊構造をやりたいんだ!特殊構造専門で行ければなあ…」

稔幸は、自分の未来を明るく語った。二人は楽しそうに笑った。

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